DINNER OF THE PARTY
「明日って、たしか、ルークの誕生日ですわよね?」
ふと、ナタリアがアニスに訊いた。
「そうでしたっけ。よく覚えてないけど・・・。」
アニスは旅に夢中で、ルークの誕生日を覚えていなかったらしく、トクナガの頭を扱いながら返事をした。
「そうですわよね・・・。最近の旅はとても危険な物ばかりでしたし。」
頭をかきながらナタリアは考えた。彼女の頭の中には、ルークに何かしてあげたい気持ちでいっぱいになった。
「…ルークの誕生日を祝うなら、パーティーを開いてみては?それなりに楽しめると思いますよ。」
そう話に入ってきたのは、ジェイド・カーティス大佐だった。
「それは良い考えですわ。」
ナタリアは、その考えにとても賛成だった。忙しくてろくに楽しむ暇もない旅だったので、レクリェーションをできたらいいと思っていたからだ。それが明日かなえられると思うと、旅のつらさも、どこかへ飛んでいってしまうようだった。
「明日、誕生日パーティーをするって、プレゼントはどうするの?」
アニスは疑問をぶつけてみた。確かにそうなのである。一日で、しかも、旅の途中で、(さらにいうのならば、ルークにばれないように)誕生日プレゼントを買うことは難しい。さすがにこの質問には、二人とも考え込んでしまった。
「では・・・。」
ジェイドは口を開いた。
「パーティーではなく、儀式にするのはどうでしょうか?」
「!! それはどういうことなのですか?」
ナタリアが聞き返した。
「ふむ・・・、ルークが明日誕生日を迎えて大人としてみとめられる・・・という類のものがいいかと思います。彼がびっくりするようなことは、今から考えれば明日に十分過ぎるほどに間に合うでしょうから。」
ジェイドは、そういった。徹夜をしてでも考えるつもりなのだろうと、アニスは沈む夕日をみながら思った。
アニスの予想は的中した。ルークにばれないように、話し合いは、ティアやガイも入れて、ルークが寝てしまった後に行われた。
「私、前から思っていたのは、ルークの髪ですわ。」
「確かに、邪魔そうですよね・・・。」
「この前、あの髪を鬱陶しそうにしているのをみました。」
と、はじめの方から、ルークの髪についての話で盛り上がっていた。ほかの意見が出なかったので腰のあたりまである髪をどのようにするかが話し合われた。
「成人断髪式がいいのではないでしょうか?」
ナタリアは、王女らしい意見を出した。王女というよりは、(昔の)貴族を思わせた。要は、ルークの髪を切ることに意義があるということで合意したので、話し合いは一段落ついた。明日の昼食の当番がナタリアだったので、ナタリアに豪華な昼食を作ってもらい、アニスがその間、ルーとほかの場所で過ごす・・・という、細かなスケジュールまで決められた。
「じゃ、明日頑張ろうぜ・・・。」
ガイはそういって寝床へいった(とはいうものの、野宿なので寝袋に入っただけなのだが)。
翌日、一同はいつもと変わらないように平静を保ちながら歩いた。そして、いつもより早めに昼食をとることにした。
「ルーク、ちょーっとついてきてほしいところがあるんだけど。」
アニスはそう言って、ルークを川辺の方に連れて行った。
「作戦開始ですわね。」
ナタリアは、腕をふるって料理をし始めた。ティアは、自然を生かした食卓造りに専念し、ガイは、ナタリアの料理を手伝った。ジェイド大佐は、木陰で何かしているようだった。
「これでルークが驚かなかったら、旦那の髪も切らせてもらうからな。」
ガイは、ハサミの手入れをする大佐に、ナタリアにも聞こえるように言った。ジェイドの手が止まって、
「ルークの性格はあなたよりも知っているつもりですよ。必ず作戦を成功させてみせます。」
昨日の話し合いで決めた予定の時刻になった。アニスは、ルークとともに花を摘んで帰ってきた。
「わぁ、いいにおいがするー・・・。」
アニスは、とてもうれしそうに言った。・・・とその時、
「ただいまより〜、ルーク・フォン・ファブレの誕生日の儀式を始める!」
それはジェイドの声だった。
「・・・え、俺の誕生日の儀式・・・!? もうそんな日にちだっけ?」
ルークは、あまり実感がないようだった。ガイやティアがルークをテーブルの中央になるように座らせ、ナタリアとアニスが次々と料理を運んだ。
「うまそうだな・・・。これ、いつの間に作ったんだ?」
「アニスとルークがお花を摘みに言っている間ですわ。」
「すごい・・・。いただきます。」
ルークは、目の前にある肉料理に手をつけた。
「うぐっ! これ、誰が作ったんだっけ?」
その料理の中には、微量ながらも、痺れ薬が入っていた。
「ナタリアが作ったんだよ。」
トクナガに乗ったアニスは言った。・・・あれ? 摘んできたはずの花が見あたらない。ルークはすごくそのことが気になった。
「では・・・」
すごく怪しい声が聞こえた。
「ただいまより、成人なさったルーク・フォン・ファブレの断髪式に参りたいと・・・」
「待てぃ!」
ジェイドの司会を遮って、ルークは必死に叫んだ。
「誰の断髪式だって!?」
「本日誕生日を迎えられた方のです。」
「それって、俺のことだろう? そんなの許さねぇぞ。せっかくの髪を・・・。」
ルークの話を無視して、一発目のハサミが右肩のあたりで入れられた。これも、ルークが左利きであることを踏まえて決められていたことだ。痺れ薬のせいで、体も思うように動かせない。アニスは、少し離れたところからトクナガと微笑ましそうに儀式を見物していた。髪を切られたルークは、さすがに片側の髪だけが長いとおかしいので、おとなしく断髪式を受けることになった。
「・・・。これで、ルーク・フォン・ファブレも、成人として・・・つまり、大人として認められました。これで、誕生日の儀式を終わります。」
周りからは一斉に拍手がなった・・・が、明らかに拍手の数が多かった。ルークが周りを見回すと、木陰にアッシュが立って一緒に拍手をしていた。ルークは、アッシュのレプリカだったので、ほかの六神将のメンバーがいるよりも腹が立って仕方がなかった。
「・・・。アッシュ、もしかして、初めからいたのか!?」
ルークの問いかけに、アッシュは
「あぁ、もちろん見させてもらった。」
と笑顔で答えた。それを聞いたルークは、ティアからハサミを奪って、アッシュの髪に向けた。が、アッシュは
「俺の髪を切るには10年早いな、レプリカ。」
と言い残して、全速力で走り去っていった。
「おい、いつからこの計画があったんだ!? それと、アッシュがいるのに進めるって、どういうことなのか、説明してもらうぜ?」
それには、すぐにジェイドが応じた。
「ルークの誕生祭を儀式にしようと言ったのは私です。昨日の夜、あなたが寝てから話し合って、今日実行しました。それは認めます。しかし、我々にも儀式をアッシュが見ていたなんて知りませんでした。あの場面で初めて知ったんですから。誰も六神将がここにいるなんて、考えませんでしたから。」
「そうですわ。あの拍手でアッシュが現れたので、私たちまで驚かされてしまいましたわ。」
ナタリアは、付け足すように言った。ここでは事実を述べるしかない。アッシュが現れたので、言い訳などは通用しなかった。
「まぁ、俺の誕生日を祝ってくれたことには感謝する。髪を切ったことは・・・忘れないよ、ジェイド。」
ルークは、そう言って、後かたづけを始めた。アニスはティアのところへ言って、訊いた
「ねぇティア? この作戦って、成功だったの!?」