もう一つのDESTINY2 「もし・・・このレンズの世界が本当の歴史だったら・・・。オレ達は存在するはずのない人物ってことになるんだよな?」
カイル=デュナミス―四英雄の息子といわれる15歳―は、レンズで動く全自動洗濯機の前で、そうつぶやいた。
黄昏都市レアルタ(といわれる)場所に、彼らはいる。この都市は姉妹都市として後2つ都市がある。世界にはその3つの都市しか存在しない。この世界に生きる者は、天地戦争時代からある”ダイクロフト”からエネルギーをもらって生活している。
「あたし達、レンズつけていないから、怪しまれちまうよ。・・・、やっぱり、隠さないといけないかなぁ・・・あいつみたいに。」
ナナリーは、距離を置いて様子を見ている仲間・・・ジューダスを微妙に冷たい目で見て、言った。
カイルの兄のような存在である、ロニは・・・と辺りを見回すと、ナンパ劇を始めていた。
「こら、アンタ何やってるんだい?」
ナナリーは半ギレ状態になって、後からロニに関節技を入れていた。
(またあの2人、やってますねぇ、坊ちゃん。)
「・・・。あぁ。どこにいっても、ああいうのは消えないようだな。」
ジューダスは、ソーディアン”シャルティエ”と他人にばれないように話をしていた。
(ところで坊ちゃん、この世界、本当の世界だと信じられます?)
「いや、最初の環境とえらく違和感があって、ムリだ・・・。」
(でも、坊ちゃんに都合の良いことがありますよ?)
「え?」
ジューダスは”シャルティエ”に何を言われたか、よく分からなかった。仲間を裏切って死んだはずの『リオン・マグナス』がここにいることは、明らかにおかしい。それは、彼自身がよく知っている。
「シャル・・・僕がここにいて、都合が良いなんて、どういうこと考えているんだ?」
思い当たることが無く、ジューダスは”シャルティエ”に尋ねた。
(坊ちゃん、あなたは、自分が仲間を裏切って死んだはずの人で、エルレインの手によって生き返っていること、後悔しているでしょう? でも、エルレインが「神」となった今では、それも普通となるわけですよ。それが「幸福」であるなら。)
”シャルティエ”は、ジューダスを元気づけるように語りかけた。
「でも、それではスタンに・・・」
(スタンも、生き返ることは可能なのではないでしょうか?)
”シャルティエ”は、ジューダスの言葉を遮って言った。
(スタンさんが望めば、神はレンズを与えてくれるのでしょう? だったら・・・)
「シャル、黙れ。」
ジューダスは、話を止めた。カイルとリアラが近くに来たのだ。
「ジューダス、何しているの?」
カイルは聞いた。
「ねぇ、ジューダス。あなたはこの世界が本物で、今まで私たちがいた世界が他者に創られたという話が本当だったら、こっちの世界で暮らす? それとも・・・」
「僕には生きている資格など無い。お前の英雄に聞けばいいことだろう。」
不安そうに仮面の下を覗くリアラに、いつもの無表情のままでジューダスは答えた。
「そんなことはないよ。ジューダスにだって、生きる資格はあるって。」
カイルは反論した。ジューダスがスタンを裏切った『リオン』であることは既に知っている。そこへ、ロニとナナリーが帰ってきた。
「まったく・・・。ロニったら、もう。あれ、何の話をしているんだい?」
ナナリーの問いかけに、リアラは答えた。
「本当にこの世界が本物だったときの対応についてよ。ナナリーはどう思う?」
「あたしだったらかい? それはもちろん、こっちが本物でも、前の世界で生きたいね。こんな本当に幸せかどうかも判らない世界で管理されるなんて、ごめんだね。」
ナナリーは少し怒ってそういった。リアラは、確かに彼女はエルレインが作り出す世界を嫌って、彼女の影響の及ばない場所で暮らしていたことを思い出し、ナナリーに聞いたことを後悔した。
「で、お前はどうなんだ? 英雄さんよ。」
と、ロニが聞いた。
「オレは・・・『本当の幸せ』が世界に必要だというのなら、前の方が良い。でも、『歴史を元に戻す』方から言えば、こっちが良い・・・。」
「・・・、言ってることが矛盾しているな。」
ジューダスはやれやれといった感じで言った。彼らは創り変えられた世界で生まれた人物だ。歴史を戻せば―彼らは消えることになる。それは、誰もが分かっていた。そのせいか、しばらくの間、沈黙が続いた。
「ねぇ・・・。」
リアラが口を開いた。
「私たちが生まれてきた理由、知ってる? 私たちがフォルトゥナ神によって生み出された理由は、『全ての人に本当の幸福』を与えることだった。歴史を元に戻すことは、私自身の望でしかないわ。だから、私は1人ででもみんなの世界に戻ろうと思うの。それが私の『運命』だと思うから。」
リアラの言葉に、皆は『本当の幸福』の手に入れ方を思い出した―本当の幸福は、苦しみや悲しみがあってこそ、手に入れられる物だと言うこと、そして、エルレインが創ったこの世界は、与えられるだけの偽りの幸福だということ―。
よし、といった感じで、皆はうなずいた。
「俺たちの世界へ戻ろう。そして、『本当の幸せ』を人々に知ってもらって、2度とこのような・・・」
1つだけ問題が残る。”神の眼”の動きを止めなければ、エルレインの勢力は拡大する。しかし、神の眼を壊せば、本当の幸せを皆で味わうことが出来ない。
(坊ちゃん、カイル・・・私に出来ることがあります。私を神の眼にさして下さい。そうすれば、5本のソーディアンで、神の眼から力を出すことは出来なくなります。破壊せずに済みます。そして、神の眼を宇宙へ飛ばしてください。元々、太陽系の一部でしたから、元の姿に戻るだけとなり、エルレインやフォルトゥナ神は、生き続けることが出来なくなります。―そして、この世界の人も。)
ソーディアン”シャルティエ”の声は、カイルとジューダスにしか聞こえなかったが、カイルが皆に話すと、皆、納得した―リアラのことだけを除いて。リアラは、エルレインとともに消えてしまうのだ。
「私、神の眼と一緒に飛んで、元の場所に戻すわ。私も消えてしまうから、最後に何かしたい。」
涙目になって話す彼女に、反対する者はいなかった、否、彼女の悲しみがいたいほどに伝わって、反対できなかったのだ。
「わかった。オレはリアラを真実・・・別れるのは嫌だけど・・・。」
カイルはリアラの手をしかと握りしめた。
「大丈夫。私が使命を果たしたら、きっと生まれ変わってまた会えるわ。そう信じて。あなたがが私の英雄だったこと、絶対に忘れないから。」
リアラはそういって、ジューダスに”神の眼”を宇宙へ飛ばす方法を聞いた。
「シャル、どうなんだ?」
(ハロルドが用意しておいた『ロケット』と勝する物があると聞きましたよ。デュナミス孤児院がある場所の地下だったと思います。)
「・・・そうか、デュナミス孤児院の地下だそうだ。行くなら早いほうが良いかもしれないな。」
「リアラ、オレたちの世界に戻ろう。」
カイルがそういうと、リアラのペンダントが輝き始めた。
「・・・さて、これを動かすんだよね? リアラ、出来るのかい?」
ハロルド博士が作った”ロケット”は、全長2.5Mは超えていた。
「レンズの力を使えば大丈夫みたい。」
リアラは、”神の眼”と自分の首に掛かっているペンダントを交互に見ていった。
(坊ちゃん、ハロルドらしい名前が付いていますよ。BHR_\。だいぶん失敗したようですね。)
「レンズで動くってところ、少し変だと思わないか?」
(動けば良かったのでしょう。)
ジューダスと”シャルティエ”は話していた。
「それじゃあ、早くやろう。リアラ、また・・・会おうね。」
カイルは無理矢理笑顔を作ってリアラをロケットに乗せた。そして、ジューダスがソーディアン”シャルティエ”を”神の眼”に入れると同時に、BHR_\は「ぐふ〜ん、にょふ〜ん」という機械音とともに大空へと飛び立った。
そして、世界には平和が戻ってきた。

後の世界には、
Nothing will over be attempted if all possible objections must be first overcome.

という言葉とともに彼らのことが語り継がれていったという。
―END―

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