とても地獄だった受験生活を終え、彼らは今、高校生になろうとしている・・・。ジーニアス、ロイド、ゼロス、しいな、コレット、プレセアの7人は、無事に同じ高校に合格することができた(最も、この7人の成績は天から地まであるのだが)。そして、今日はめでたい入学式なのである。
その前に、入学する高校の説明をしておこう。7人が受験したのは、シルヴァラントにある私立ロベルタンスト高等学校といい、定時制の学校である。ジーニアスの姉、リフィルが「教育費にそこまでお金をかけることができない」としながらも、ジーニアスたちの学費免除を目的に私立学校を選んだらしい。もちろん、期待に応えるようにジーニアスは、特待生として、施設費、授業費などが免除されることになった。
「いやぁ、やっと俺たちもリフィル先生から解放されて新しい有意義な生活ができるんだな!」とロイド。リフィル先生のスパルタ教育には対抗できなかったロイドは、その生活が終わることにとても開放感を感じているようだ。
「・・・って、ロイドは全然勉強しなかったから、先生にしかられてたんでしょう・・・。ロイドにも改善すべき手があっただろうに。」しいなは呆れたように言う(ロイドはこの中で一番成績が悪かったので、仕方がないかもしれない)。「・・・今日の天気は電車通学に向かない天気ですね・・・。」プレセアが独り言のように言った。しかし、横にいたジーニアスには聞こえていた。今日の天気は、本当に入学式にふさわしくない、春の嵐だった。プレセアには、この天気が高校生活を楽しむことはできないことを予告しているように感じられた・・・口に出しては言わなかったけれど。
1時間近くかけて高校にたどり着いた。しかし、始業のチャイムまでかなりの時間があったので彼らは余裕を持ってクラス替えの掲示を見ることができた。
「・・・。なぁこれって・・・。」ゼロスにいやな予感がよぎった。なんと、1学年は100人、クラスは7クラスあるのだが、ゼロスが入っているE組は、なんと、7人だったのだ。しかも、今まで共に学んできた、今いるこの7人・・・。彼らには、これが偶然だとは思われなかった。
「なんか、仕組まれている気がするな・・・。」コレットがつぶやく。他の人も、同じことを思った。あのプレセアは、「やっぱり・・・。」と予感が的中してしまったことに落胆していた。しばらくの間、誰も話すことができなかった。そのまま、1年E組の教室へ案内に沿っていくほかなかった。教室はすぐに見つけられたことがせめてもの救いだった。見慣れた仲間との高校生活の1年目を送る・・・このことが、安心できるような、かえって不安なような・・・複雑な気持ちにした。ただ、これだけでは済みそうにないことだけは彼らの心の内の共通点だった。
時間がきて、とうとう入学式の会場へとこの学校の先生と見られる人によって案内された。大きな拍手と共に入場するまでは予想通りであった。ただ、そこで何かが違うことに気がついた。在校生がいないのだ。会場内にいるのは、大人ばかり。在校生代表がいるはずだ・・・と一番強く思ったのは、ジーニアスだった。リフィルに高校についてずっと教わってきたからだ。入学式のことについても、きちんと話を聞いておいた・・・はずである、と彼は記憶を呼び起こそうとした。が、式が進行するにつれて、とんでもなく悪い予感がよぎったのだった。「学校長祝辞」という言葉と共に壇上にあがった校長先生と見られる人物・・・この陰には見覚えがあった。そう、あのリフィル・セイジだったのだ。
「○×△□☆◇◎・・・。」7人は幻覚だと必死に頭の中に言い聞かせた。だが、リフィルはそれをすぐに現実へと引き戻した。
「諸君、私立ロベルタンスト高等学校への御入学、おめでとう。君たちはこの学校の初代入学生です。そして、私が・・・」
「いや、私、そこは聞きたくない・・・!」コレットは目をつぶって祈り始めた。
「私が、ここの学校の設立者であり、校長であるリフィル・セイジです。今までは義務教育内の教育者としてやっていましたが・・・」
「免許も取らずによくここまで言うよ・・・。」予想があったことにさらに呆れてしいなは隣に座っていたプレセアに小声で言った。
「・・・私が思うに、お金がかかる私立高校を受験させたのは、先生が校長先生として学校を運営できるからではないでしょうか? クラス分けを見ても、私たちだけ別扱いにしていますし・・・。多分、また3年間先生の手によって私たちは教育を受けることになるかと思います。」プレセアは冷静な顔つきだ。しかし、心の中ではとても大きなショックを受けていた。リフィル先生から解放された嬉しさはほかの仲間と変わらなかったから・・・。
「担任紹介」と、式は進められた。リフィルは紙を広げて担任・副任の先生と、担当する教科名を読み上げていった。
「続いて、1年E組。」その言葉を聞いて、7人は息をのんだ・・・いい先生に担任を持ってもらえますように・・・決して、リフィル先生ではありませんように・・・とその瞬間、皆して祈った。
「担任、クラトス、教科、地理学・・・」その瞬間、皆は息を吐いた。クラトスならば、十分にやっていけると思ったのだった。しかし、それはまだ早かった。まだ、副任が残っていたから。「副任・・・リフィル・セイジ。教科、世界史」
「うげぇぇぇぇぇぇぇ・・・」7人同時にため息。何となく予想はしていた物の、実際に言われてしまうと、悪夢を見るようだった。しかも、遺跡モードになる可能性が強い、世界史・・・。1年間は確実に授業を受ける・・・。とんでもないことになったと7人それぞれが思った。
式が終わり、クラスに戻ると一斉に同じ言葉を発した・・・「リフィル先生には世界史を担当させられない!」・・・と。誰もいないことを確認したはずだったが、そこには担任のクラトスがいた。
「く、クラトス・・・先生!?」ロイドはあわてていった。クラトスは、何も聞かなかったことにしたのか、敢えて何も言わず、教卓について、「席に着け」とだけ言った。7人は黙ってその言葉に従った。
「リフィル校長を悪く言うな。ここの学校を建てたのも、君たちのためだ。君たちの自立が真の目的だ。・・・3年でその目的を果たしてくれ。」静かな、けれども心に響く声だった。いつものクラトスではないような雰囲気さえあった。「もしかして、エクスフィアがプレセアの時のように誤作動したかな。」とロイドは思った。・・・実際にはリフィルに言われて無理矢理演技しているせいだが。
「では、取り敢えず出席をとる。コレット・ブルーネル、・・・ジーニアス・・・」
「もう、ボクの名前は『ジーニアス』だけでもいいです。言いにくかったら・・・そうしてください。あと、先生の弟だからって、ひいきしないでほしいです。」ジーニアスは言葉を詰まらせたクラトスに言った。
「・・・。あぁ、ありがとう。君は成績優秀だから特待生にした。これからも君を見る目は他の人と平等だ。」クラトスはそれだけを言うのが精一杯だった。ジーニアスが『先生の弟』ということに負けそうになっていた。「では、出席をとり続ける。ゼロス・ワイルダー、藤林しいな、プレセア・コンバティール、ロイド・・・アーヴィング。」
クラトスは出席をとり終えて、安心したのか、ほっとため息をついて、「君たちは特別に作られた7人クラスにいられることをよく思った方がいい。なぜなら、この学校の偏差値は地区の中で一番低いと思うからな・・・。特待生はジーニアスの1人だけだ。このクラスが一番優秀なクラスになると信じているぞ。」口調が、いつものクラトスに戻っていた。ロイドたちはこのクラトスを見て、安心感を覚えた。と、その時だった。副任のリフィル先生が教室にやってきたのだ。クラトスは演技を再開して、「起立、礼、着席。」と3号令をかけた。「みなさん、このクラスに入ったからには安心しなさい。私がちゃんと教育をしますわ。」とリフィルは上機嫌だった。(続く)
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