ほんの少しばかり前、檜佐木は他人との間に
いつも一定の距離を置く癖のようなものを持っていた。
癖というよりは、意図してやっているとしか思えない態度ではあったのだが、
そのせいか、誰も彼に近づこうとはしなかった。
誰にも心の内を見せず、笑うどころか感情の欠片さえ見せない、
まるで心の扉を閉じてしまい、其の扉を開く鍵をどこかに無くしてしまったかのような、
そんな冷たいイメージをいつも持ち続けてきた。





他人と深くかかわってしまうと、
無くした時にとんでもないダメージを精神的に受けてしまう。



誰が教えたでもないその教えを自分自身にいつも言い聞かせていた。
けれど、この赤毛の青年はいともたやすく、
周りから怖がられる存在の檜佐木に近づき、一言、言ったのだ。








『先輩、なんでいつもそんなに寂しそうにしてるんスか?』







寂しそう。





そんな風には見せていない筈なのに、この青年ははっきりと、そういったのだ。







満面の笑みで、そういったのだ。







『何一つ犠牲にしないでいたら、欲しい物なんて、何も手に入らないっすよ?』









それから確か、少しばかり怒った顔で










『そんな態度しかしないでいたら、
失うばかりで何も手に入れる事なんて、できねえっしょ?』








少しばかり可笑しい敬語で、たしか、そう言ったのだ。



一纏めにした燃えるような赤い髪に、いつも眉間に皺を寄せその、
少しばかり残る幼さを隠し、背が馬鹿みたいに高いくせに、意外に細くて、
それにおまけしたかのように小さな顔。
敬語が苦手なのか、先輩相手にもよく『あんた』と呼び、其の上、其の容姿。
なのに、其の性格で回りから疎ましく思われる所か、逆に視線と興味を引き寄せる。
其の上成績もいい。


初めて会った時に、すでに其れだけの情報をいとも容易く集められるほどに、
恋次は人の目と興味を引いていたのだ。



だから、初めて会った時に、こいつは駄目だと、頭の中で警報が鳴り響いたんだ。





こいつだけは駄目だと。






いつか誰かに深入りしても、こいつにだけは深入りしちゃいけないと、
赤いランプを点滅させながら警報が鳴り響いたんだ。






いつか、無くした時に、とてつもなく、大きな、
大きすぎるダメージを受けてしまうから。






そう、自分に言い聞かせてきたのに、この馬鹿は離れるどころか、
周りにいる誰よりも冷たく接しても、そうする度に余計に側によってきた。

それでも、どうにか、情を移す前に卒業し、無事に赤犬とはオサラバした訳なのだが、
結局恋次も檜佐木の卒業を追うかのようにあっという間に卒業し、
瞬く間に副長にまでのしあがってきたのだ。
おかげで、まわりでウロチョロされる回数は減るどころか増えまくり、
移すまいと言い聞かせ続けた情はあっという間に移してしまったのだ。


それでも、始めの内はただ、少しばかり仲のいい後輩として見ていた。

その見方があっという間に友人に昇格し、そして瞬く間に、放したくなくなった。






なのに、其の彼は、彼のいる隊の隊長に気に入られていて、
彼もひどく、其の隊長に懐いている。










だから、あの時警報が鳴ったんだ。











初めから無くすと判っていたから、だから警報は大きな音で鳴り響いたんだ。








それでも…



「ったく、ほんとにあんた、笑えない冗談はやめてくださいよ」
「ほーお。あんた、ねぇ。ちょっと見ない間にずいぶんとお偉くなったもんだな」
真顔でそう言いながら頭を撫でると焦ったかのように謝りだす。



つい、癖で、と。



恋次はその、つい、で、あの冷酷で恐れられてる朽木隊長でさえ
たまに『あんた』とよんでいる。
それでも、その『つい』をいとも容易く、微笑んで許すのだ、あの鉄仮面は…













「馬鹿が。怒ってなんかいねーよ。」











それでも、自分は彼から放れられないでいる。






だから、憎しみと、悲しみと、愛しさを隠すかのように



やんわりと微笑みながら、そう言ったんだ。



続きます? 修兵さん、愛しいです。 恋次を大好きでいて欲しい。 いや、原作じゃ、無理ですけども。 つーか、読みきりでしか一緒にいるとこ見た事ないですけども、 でも、あの頬の刺青はきっと運命ですよ!! 69とか。六番隊と九番隊ですよちょっと。 順番逆ですけどね。 96だともっと愛しかったよ、多分。
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