この星


今この星に、もしも2人きりなら


もしも愛があるなら



君とソレを見つけたい



 
+ DISTANCE +
 


 
雨が止みそうな気がした
昼までは馬鹿みたいに晴天。
午後からは雷を含む雨。
今にいたっては暴風注意報まででるしまつ。
なのに根拠の無い自信。


「黒崎さん」


すぐ側にある窓から聞こえたのは、聞き覚ヲのある、けれどありえない声で、
空耳かと思おうとするも、もう一度耳に届く自分の名前。

窓の外からの声。
こんな雨の中。

しかし、今まで誰もこの窓から侵入した事は無い。等とはいえなかった。
もしかしてと思いほんの少しの可能性、ありえない来訪者の声に少しの可能性を見出し、
一護は勢い良く窓を開けた。
「やぁっぱり、居るんじゃないスか、黒崎さん」
「ばっ…」
…か野郎と怒鳴り散らしそうになりそうになる頭をどうにか抑え、
ずぶ濡れの作業着ごと腕を掴み中へ引き入れタオルを投げつけた。
「何してたんだ。」
一護は、さも機嫌が悪そうに顔をしかめながら、いつもの数倍、低音な声を出した。
「ノックしてたんスよ」
帽子と羽織を脱ぎ、渡された、もとい投げつけられたタオルで身体と
髪の毛を拭きながら浦原は返事した。
「窓にか」
「玄関でも良かったんスけど、こんなずぶ濡れで、玄関から入ったら
追い返されそうですし、それに、アタシ、黒崎さんの御家族と面識ないですよ?」
浦原 のもっともな意見にグゥの音もでない。
かといってココで引き下がるわけにも行かないのは道理。
「ルキアに用か?あいつならまだ帰ってきてないぜ」
一護が言うと、浦原 は首を振った。
「黒崎さん、アナタにですよ。」
「俺に?別に今、必要なもんなんてねーけど…」
「違いますよ」


どうにも話が掴めない。


こんな雨の中傘も差さずに窓からの来訪。
ルキアに用かと思えば、俺に用。
何か必要なわけでも助けが欲しい訳でもない。
もしかしてと思う内容は雨の日になどは決して聞きたくない内容。

だからといって、晴れた日にされても困るんだが。



昨晩、浦原 の店で知らずに飲んでしまったアルコール。
初めての味に調子に乗って飲み過ぎたために、冷蔵庫の中の酒類は残り少なくなるし、
なかなか手に入らないというレアモノさえ飲み干してしまう始末。
見た目からして酒好きそうな浦原の事だ、いくら我侭を言っても怒らないコイツも
今回ばかりはかなりこたえたのではないだろうか?
「あ、今何かイケナイ事考えてません?」
知らず知らずの内に眉間に刻まれていた深い皺に長く細い指の先を突きつけられる。

こいつは人の心が読めるんじゃないだろうか?

いつも、欲しい言葉をくれて、いつも、正しい道へと、間違いを正して導いてくれる。
ソレは決して簡単な事などではなくて、だからこそいくつ有るのかも解らない歳の差に
言いようの無い不安を感じる事もしばしば。
「黒崎さん?」


問題は無い。


俺がその歳の差を感じさせないよう努力をすればいいだけの事。
それだけでいいのに、それだけの事が俺には難しくて仕方が無い。
背伸びをしようとすればするほど何か見えないリスクが圧し掛かるような、
そんな気がしてならない。
「黒崎さん、アタシの声、聞こえてまスか?」
浦原は、タオルをベッドへと置き、一護の頬へと両手を添え、見下ろしていた。
「聞こえてる。ただ、あんたの話を聞いてる間、雑念が全く浮かばなかったら、俺は仏陀だ」
「何言ってんスか。アタシは話しらしい話なんて何にもしてませんよ。
黒崎さん、ずっと放心状態で、何、考えてたんスか?」
おそらく、こいつは俺の考えてた事の大半は予想が付いているんだと思う。
今の今までへらへらしていた顔が、急に真面目なものに変わり、視線にもずっと、
突き刺さるような鋭い視線へと変化していた。
「あんたは…」


言って、いいんだろうか?


否、俺はいいとは思わない。
只でさえ、大きな距離が、情けない悩みのせいで、余計なガキらしさを
アピールしてしまい、更なる距離を設けてしまいそうだ。
かといって、じゃあ何でよりによって、こんな土砂降りの日に傘も差さずに
窓からの来訪なんだ。

訳がわからねえ。

「あんっ」
続くはずだった言葉は、浦原の唇に吸い込まれるように、かき消された。
「黒崎さん、アタシは別に用事があって、ココに来たわけじゃ無いんスよ。」


なら、何なんだ。


真面目な顔で、そんな事を言われたら、話しの内容が右から入って左から出ちまう位に、
見惚れちまうじゃねぇか。この、色男め。
「黒崎さん、アタシは別に、別れ話をしに来たんでもないんスよ?」
「んなっ…」


綺麗な声だな、と思った。


次の瞬間には一護の頬は、耳は、一護という名前に負けぬくらい真っ赤な
苺のような色になっていた。
心の奥を見透かされた。そんな表現が毎度、似合う彼の言動。
かっこいい、優しい、時に力強い大好きなあいつの声。
その声は、俺の悩みを浦原の口から外へと形にしてくれる。
だから、こいつは人の心が読めるんじゃないか?なんて思うんだ。
「かといって、その唇を奪いに来たわけでも」
唇をなぞる指が妙に淫猥で
「アナタを押し倒しに来たわけでもないんス。」
何度もなぞられるうちに、指でなくて、その唇でなぞって欲しくなる。
「こんな雨の日は、黒崎さんで無くとも、心寂しくなる物ですよ。
アタシはただ、アナタに会いたかった。そんな理由じゃ、いけないですかねぇ」
不意に視界が遮られる。
抱きしめられたと気づくのに数秒。
目の前にあるのが浦原の胸だと気づくのに数秒。
あいつのあまりに暖かくて、それでいて優しい声に、言動に、行動に、
触れてる低温な身体の独特な温かさに、近さを実感し、俺の頬が濡れてるのに
気づくのに数秒。
「アタシの胸でよかったら、すでに濡れてるんだ。遠慮なんてしないでください。
アタシは、アナタの内の涙を外へと開放してやるために来たんスよ。
せめてその涙が止まるまで。ねぇ、一護さん。」

最後に聞いた言葉は、一番優しい声で、俺の飛び切り好きな声色で、
名前を呼ばれた気がしたんだ。

気が付けば、真っ暗闇の中ベッドの中にいた。

記憶が途絶えている。

覚えているのは、浦原の胸の中で、コレでもかという程に泣いた事。
お陰で頭がガンガンする。けれど不思議と、胸は軽くなった…ような気がする。
やっぱりあいつは、人の心が読めるんじゃないだろうか?だったら…


「側にいて、抱きしめてくれよ…喜助」


ブッと何かを噴出すような音が聞こえたのは気のせいだろうか?
「浦原?」
身体を起こして辺りを見回すものの、今一目が闇夜になれない。
「な、何スか?」


きっと今、耳が真っ赤なんだろうな。

ふと、思わず笑い声が上がる。


「何なんスか、もぅ。」
浦原はぶつぶつ言いながらもカーテンをあけ、窓から月明かりを入れる。
やっと浦原の顔が見えた。
「喜助、俺は、お前がだいっ好きだ」

だから飛び切りの笑顔で抱きついてやった。


当分、離してなんてやらねえ。


一生、逃がしてなんてやらねえ。

俺の勘は当たるんだ。
現に今、根拠の無かった勘の答えが出た。
窓の外は、雨模様などではなくて、満天の星空のした、
大きな三日月が自身万万に輝いていた。


距離は遠いからこそ、近づいた時の嬉しさは半端なもんじゃねぇんだ。



「…アタシだって、あなたに負けない位、愛してますよ。一護さん」



この星


今この星に、もしも2人きりなら


もしも愛があるなら


君とソレを見つけたい


二人で居られるこの時を、一秒でも長く今



強く 優しく 深く




感じたいんだ



Boaを聞きながら。 冒頭あたりはそれが感じられますねー。 なんというか… こんなの一護じゃねぇ… 浦一というよりも浦コンっぽい(爆) 興味がある方は一護をコンに脳内変換しながら読んでみてください。 笑えるかもよ。
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