+ ある種の屈辱と快楽 +




つまるところ、自分でも何故抵抗もせずにこの子供に付き合っているのかがわからない。
(否、判るのだがただたんに、ソレを肯定したくないだけだ。
もしくは自分的には肯定しているものの、ソレを彼に悟らせまいとし、
気付かないふりをしているのかもしれない。)
嫌いなら突き放せばいいだけのことだが、2択のうちのどちらかだと言われたら、
別に嫌いだという訳じゃないのだから好きになるだろう。


未だに妙に屈辱的で嫌になる。


こんな小さく幼い子供に組み敷かれ(其の上男だ)振り払おうとすれば
振り払えるのだが(鋼の義手義足だとしても彼の体重を足したところで
100キロにも満たないだろう。彼の身体は健康的ではあるが、年齢の割に聊か幼い。
多分、骨もまだ細いのだろう)ソレさえせずにいるのはこの子供が哀れに
思えてくるせいか、特に今やる事が無いせいか、それとも何か、訳の分からない
考えでも持ってしまっているせいか。





「なあ、大佐。俺の事好き?」






ああ、そんな心配そうな今にも泣きそうな顔で聞く内容なのだろうか。

なんともまた幼い。

もう少し大人になれば、愛してるという言葉さえもが偽りだとしても
簡単に口から出せるというものなのに。
むしろ、偽る時位しか使わなくなるだろう。私がそうだ。
何を一人相手に本気になる事があるんだ。
いや、本気だと勘違いする必要があるんだ。
そもそも恋愛なんて、ただの思い込みじゃないか。
人を好きになって(と、勘違い、もしくは思い込んで)ソレが恋愛ごとへと
発展するのだが、つまる所恋愛が永遠に繋がらないのは思い込みでしかない
からだと何故この子供は気がつかないのだろう。
この子供の大人以上の知能ならば簡単に分かる事なのに。
それとも子供だからこそ、そんなものを信じているとでも言うのか。







思い起こせば彼は一体いつ私に告白をしたのだろうか?


いまいちよく思い出せはしないが、1年以上前だったのは確かだろう。
たしか、あの時私は酷く眠くて、会話をするどころか口を開くのさえ億劫だったはずだ。

だから、返事は待ってくれと返したんだ。






ああ、何だ、思い出せるじゃないか。





そして彼は幾月かの猶予を与えてくれたのだっけ?
そして私は見事にソレを忘れ、再会した時にまたこの子供に告白させたのだ。
ある意味酷い男(大人)だが、そもそも、たとえ覚えていたとしても、
こんな子供(男)の男への告白をどこをどうして信じろというのだ。
否、信じると言う以前にたとえ信じたとしてもどう返事をしろと?
この子供の用意した返事はたったの二通りで(この子が言うには恋愛での返事など
二通り意外に何も無いのだそうだ。まあ、たしかにそうだろう。
「まあまあ」という返事が存在したらソレはもう恋愛ではなくなってしまう)、
好きか嫌いしかない選択儀の中、断ろうと思えば


「嫌いですゴメンナサイ。」


しかないのだが、問題は私がこの子供を嫌ってなどいない所で。
其の2択しかないのなら、嫌いじゃないので、好きになるのだろう。
たとえ恋愛的に好きではないとしても、嫌いじゃないという返事だから
イコール好きだ。
なんとも屈辱的で仕方が無い。





「何、大佐、気持ちよくない?」





良くない訳じゃない。
ある意味この行為に慣れてしまった今では(未だこの子供相手に後ろで
イける訳ではないが、他の相手で試した事があるわけではないので、この子供が
ただ単に下手なのかさえもわからない訳で)結構な快楽さえ得られるものになった。
子供の努力の賜物かそれともただ私がなれてしまっただけか。



初めて身体を重ね合わせた時など(嫌いではないと返事をしたすぐ後だった。
和姦では有るもののある種、強姦に近かったと今になってもそう思う。
彼にソレを伝えると今でも渋面を作る。ざまあみろ。けれどなんだか情けなくもなる。)
あまりの気持ち悪さに、行為のすぐ後に吐きに行ったほどだ。
何より、彼は身体のサイズに比例し、指もあまり長いという訳ではないくせに、
男の一番大事な場所だけはしっかりと身体のサイズに反比例しているのだから
なんとも腑に落ちない。
初めてだと言うのに(男相手に、だ。ご婦人相手にも後ろを使った事は無いが、
一生使うことも無いだろう。初めての相手にはなんともグロテスクだ。
まあ、セックスなどそういうもの以外のなんでもないのだが)2本も3本も指を射れるし
(始めの内は1本だった。それでも悪寒が走った)掻き回すだけ掻き回すと
(本人は慣らしたと思ったのだろう。大間違いだ。)一度に全部を挿入するし
(おかげで思い切り冷や汗をかいた。確か昔、骨折をしたときの感覚に
似ていたかもしれない。あの時も思い切り冷や汗をかいたものだ。)
加減が判らなかったのか、挙句中で果ててしまうし。
おかげで気分は最高に悪く(当たり前だ。内臓内を掻き回された挙句、中で
出されたのだから)抜かれたと同時にトイレに吐きに行ったのだっけ。



今になれば懐かしい事でもある。



シャワーも一通り終え、幾分気分も回復し、部屋に戻ると彼の姿どころか
衣服さえ見つからなかった時には驚く(怒る)以前に、呆れもしたが
(正直ヤリ逃げかとも思った。まあ、それでも良かったが。)、次に会った時に
はっきりさせればいいと思ったのに、後日会ったのは弟のアルフォンスのみ。
兄は先に駅で待っているそうだ。


ああ、そうですか。


なんとも自分勝手な子供だと思った反面実の所其のときすでに別の意味で
怒っていた訳だが、其の時の私には其の訳がさっぱり判らなかったのだ。



なんとも馬鹿馬鹿しい。




其の2ヵ月後また出会ったのは弟のみ。
いい加減腹が立って宿に怒鳴り込みに行ったのはアレキリだろう。
年甲斐も無く、本気で腹が立ったのは久しぶりだった。
部屋の中で彼を追い詰めるのはなんとも簡単だったが、彼の其のなんとも
表現し辛い表情を見た瞬間何処かに怒りが吹き飛んでしまったんだ。


あの表情には妙に切なくなった。


多分、ヤってる最中にあの顔をされれば後ろでもイけるんじゃないかと思う。
ムカツクので一度も言ったことは無いが。


其のとき私はてっきり其の子供と付き合ってるものだと思っていたのに
(「付き合ってください」との告白に嫌いじゃないと答えた挙句、
セックスまでしたのだ。当然だろう)、彼はふられた物だと思っていたそうだ。
まあ、今考えれば、ヤったすぐ後に出た言葉は「吐きそう」、其の後事実、
直ぐに吐きに行ったのだからかなりのショックを受けたのだと思う。
私がご婦人にそんな態度をとられた日には多分、死にたくなるだろう
(直ぐに立ち直るだろうが)。


そして其の結論が振られただ。


判らなくも無いが、あまりにも率直な結論ではないだろうか?
会いに来なかったのは自分の顔など見たくもないだろうと思っての事だった。
この子供は好きな相手の為にならなんでも我慢できる(する)ようだ。
ソレが判ったとき、どうにもこの子供が愛しくて仕方が無くなってしまったから
やんわりと口付けたのだ。
甘くも深くも無い、他愛の無い子供のような其のキスに彼は泣きそうな目をしながら
微笑んでくれたのだ。ソレが嬉しかった。



今思えば、あの時すでにこの子供にはまっていたのだ。



今でさえそんな事はこの子供に伝えてなどいないけれど
(伝えていれば、毎度、好き?などと聞きはしないだろう。
其の質問にさえ答えた事は無いが。)。




「なー、大佐。何でヤってる最中でさえ俺の名前呼ばねーの?」




この子供はわかっていてそんな質問をするのだろうか?
それとも、ただ、純粋に自分の名前を読んで欲しいのだろうか?
しかしソレはつまる所「愛している」に繋がるわけで、だからたとえ
無意識だとしても結果としては同じだ。





呼び方が変わるのは愛情に比例する。





いつだったのか、どこで聞いたのかさえも覚えてはいないものの、妙に納得する内容だ。




愛していると、子供に嘘を付く(と、嘘をつく)。
つまる所、彼はソレが嘘だと判っているから
(心の中で其の嘘がまた嘘なのだとは気付いていないのだが)
だから、好きだといってくれ、名前を呼んでくれと喚くのだ。
だが、だからこそ好きだなんて言った事も無いし、彼の名前さえ呼んだ事はない。
其の行為の裏に、私が彼を束縛したくない(あわよくば本当の恋をして欲しい。
今の彼の恋愛ごっこが最近では本気の恋愛のように思えてきたから少し、
嬉しいような、かなり、困ったような気もするのだが。)
という本音を隠している事にすらこの子供は気がつかないのだろう。
それはやはり、未だ彼があまりに幼く、そういう考えにたどり着かないからだろう
(むしろ性格のせいかもしれないが)。





「ロイ、好きだよ。」





いつからか彼は私に好きだと伝える時に名前で呼ぶようになった。
だからこそ、余計に彼が私に本気になっているのではないかと言う錯覚を覚えてしまう。
間違ってしまう。



けれど、実際は私も彼が愛しいのだ。
言葉にはしないだけで。
こんな子供に、と思うものの、久しぶりに(初めてかもしれない)
人を本気で好きになったのかもしれない。



だからこそ、ひねくれられるだけ、ひねくれているのだが。



だから、彼に好き、ましてや愛してるなど、この先も言わないだろう
(いつか、まだ彼が私の事を好きならばきっと言うだろうが)。
だから、今日もそっと彼への返事の代わりに啄ばむかのような下唇を甘く
くわえるだけのキスと、濃厚なのを自分から彼にするのだ。






君を、愛しているよ。





其の言葉は、今はまだある種、屈辱でしかないのだけれども、
何故だか其の裏に、酷い快楽を隠し持っているのだ。





初めて、屈辱は快楽と裏表なのではないかと思った。





そう思いながらまた、胸の内だけで君を愛していると呟く。




私骨折った事ないですー。 受け大佐独白。 ノーコメ。 だって…なんというか。私の中には2タイプにエドロイがあります。 そして2タイプのロイエド。 合計4タイプ。 其のどれもが愛しい。
2style.net