想いと痛み


燕旺珂と白怜迅。
俺はこの二人の関係が羨ましく感じる。
そして、自分には決して手に入れることが出来ない絆に嫉妬した。

何も言わずとも背中を任せられる相手が居る燕旺珂と
自分の命に代えても守りたいと思える相手が居る白怜迅。

―――以前は何に嫉妬し、何に苛立ちを覚えるのかもよく分からず、
ただどうしようもないという絶望感と虚無感を感じていた。

俺にもそんな相手が居たら・・・と何度思ったことか。
その度に、考えたことがあまりにも馬鹿馬鹿しく思えて自己嫌悪した。
自分から他人を信じようとしないくせに、そんな相手が出来るはずが無い。
そんな甘いことばかりを考えるよりも、今の俺は敵討ちを何よりも優先しなければならない事だったのではないか。

「はぁ・・・・・・」

ため息が出た。
この頃、その決意が少しずつ自分の中から薄れていくのが分かる。
当初はあんなに燃え上がっていた復讐の炎が今では小さく弱々しい。
忘れたいなんて望んでいないのに、あの時の事を少しずつ忘れていく自分。
それが兄さん達に申し訳なく、俺の心をさらに沈めていった。

しかし、いつまでも落ち込んではいられない。
沈む気持ちを静めようと、青く澄んだ空を見上げた。
見上げた空はどこまでも続き、雲は届きそうで届かない遥か遠くを漂っている。

―――その瞬間、視線の端にある姿が映る。

視線を少しだけずらした所に。
数歩歩けば届きそうな場所に。

ただ主の為だけに日々を過ごしていると思われる男が歩いていた。

―――胸が高鳴る。
こちらに気づき「青樺殿」と彼の唇が動く。

今ではもう、分かっている。
気づいてはいけなかったこの気持ち。
叶う事も無く、伝えることも許されない恋心。

だからこそ、想いは俺の中でぐるぐると溢れ出そうになる。
俺は、こんな事を想ってはいけないのに。
罪悪感と得体の知れない気持ちで押しつぶされそうだ。

「白・・・・・・怜迅・・・」

それでも、少しだけでも、何もかもを忘れて話していたい、そう想うのは罪だろうか。

「旺珂様を見かけなかったか」

彼が何気なく発した、当然の発言は俺の心を貫いた。

―――ああ、何で。この人はあいつの事しか見えていないのだろう。

軽い、軽い絶望感。
これは罰。
何も出来ない俺への、一番痛い罰。

「・・・・・・見ていない」

声は震える。感情を押し殺すように出したオトは掠れていた。

「・・・・・・そうか」

それだけの言葉を残し、彼は俺から離れていった。
俺の気持ちにも気づかず、ただ主を捜す為だけに別の場所へと向かう彼をただ見つめていた。

この瞬間、俺は憎しみ以外で初めて涙した。


―――銀の髪を持つあの人を想って。


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白←青樺SS。
受けキャラの片思いってあんまり書かないよなと思って書いてみたもの。
何気にENDの管理人であるキノ子ちゃんとの企画だったりします。
白←青樺という題材でお互いが書きあって、どれだけ違うものが出来るかを試してみようという企画。
ち、違いすぎっ・・・!


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